埼玉新聞朝刊「ドクターQ&A」(埼玉新聞掲載2021年2月19日)

 祖母が「眼が見えにくい」と言うので病院に連れていったところ「加齢黄斑変性」の診断を受けました。どのような病気か教えてください。

 加齢黄斑変性は、加齢により網膜下に老廃物が蓄積され網膜色素上皮が徐々に萎縮したり(萎縮型黄斑変性)、異常な血管である脈絡膜新生血管が侵入し(滲出型黄斑変性)、網膜の中央である黄斑が障害される疾患です。見えづらさや変視症(歪んで見える)や中心暗点(真ん中が見えない)、出血や黄斑浮腫を伴う場合は急激な視力低下などの症状があり、欧米では成人の失明原因の第1位です。日本では50歳以上の人の約1%にみられ、高齢になるほど多くなり、失明原因の第4位の疾患です。
 視力検査、眼底検査、眼底三次元画像解析(OCT)、必要に応じ造影剤での造影眼底検査などで容易に診断ができます。
 軽症の場合は進行予防にサプリメントのお話しをする場合がありますが、特に進行した萎縮型は残念ながら有効な治療法はありません。滲出型黄班変性にはVEGF阻害剤投与や光線力学的療法などがありますが、罹患期間が長い場合や網膜障害が強い場合は視機能回復が期待できないことも少なくありません。また今後、iPS細胞での治療が期待されますが、臨床への応用までには、まだまだ時間が掛かるようです。ですので、何らかの異常を感じた場合は速やかに眼科医療機関を受診し、早期発見早期治療が重要です。
2023年11月11日